MENU
【初回30分相談無料】人事労務のご相談・お問い合わせは公式サイト(こちら)へ

「知らなかった」では済まされない!最低賃金法違反のリスクと正しいチェック方法を社労士が解説!

毎年秋になるとニュースで大きく報道される「最低賃金の改定」。近年は物価高騰や政府の方針もあり、全国的に大幅な引き上げが続いています。2025年度(令和7年度)の全国加重平均額は前年から66円引き上げられて1,121円となり、これは制度開始以来過去最大の引き上げ幅でした。ここ千葉県でも1,076円から1,140円へと64円引き上げられています。

中小企業の経営者や人事担当者の皆様の中には、「毎年毎年、最低賃金が上がって人件費のやりくりが大変だ」「うちは一応、近隣の相場に合わせて払っているから大丈夫なはず……」と思われている方も多いのではないでしょうか。

しかし、給与の支払い方法(月給制や手当の構成)によっては、「会社としては十分に払っているつもりなのに、実は法的な最低賃金を下回っていた」という落とし穴に陥ってしまうケースが少なくありません。

本記事では、中小企業が絶対に押さえておくべき最低賃金の基本から、正しい計算方法、違反時のリスク、そして社労士の視点を取り入れた対策までを分かりやすく解説します。

目次

1. 最低賃金制度の基本(2つの種類)

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定め、会社は「その金額以上の賃金を労働者に支払わなければならない」とする制度です。これには大きく分けて「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

① 地域別最低賃金

都道府県ごとに定められている最低賃金です。産業や職種を問わず、その都道府県内で働くすべての労働者と使用者に適用されます。一般的に「今年の最低賃金は〇〇円になった」と話題になるのは、この地域別最低賃金のことです。

② 特定(産業別)最低賃金

特定の都道府県内で、特定の産業(例:自動車製造業、各種小売業など)に従事する労働者を対象に、地域別最低賃金よりも高い水準で定められているものです。

注意ポイント

もし自社が「特定最低賃金」の対象産業に該当する場合、地域別最低賃金よりも高い「特定最低賃金」の額が優先して適用されます。まずは自社の事業がどの区分に属しているかを確認することが重要です。

2. 対象となる労働者の範囲(「正社員だから大丈夫」はNG)

最低賃金は、雇用形態に関わらず「すべての労働者」に適用されます。

  • パート、アルバイト
  • 契約社員、嘱託社員
  • 正社員

ここで中小企業にありがちな誤解が、「最低賃金はパートやアルバイトのためのもので、月給制の正社員は関係ない」という思い込みです。

月給制であっても、基本給が低めでみなし残業手当(固定残業代)などで総額を膨らませている場合や、年間所定労働時間が長い会社の場合、月給を時間換算すると最低賃金を割り込んでいるケースが多々あります。雇用形態を問わず、全員の賃金がクリアしているかチェックが必要です。

3.【実践】最低賃金の正しい計算方法と「除外される手当」

最低賃金をチェックする際、支給している「総支給額」のすべてを対象にして計算してはいけません。法律によって、計算に「含めていい手当」と「含めてはいけない(除外する)手当」が厳格に決まっています。

① 最低賃金の対象から「除外」される手当

以下の手当は、最低賃金に達しているかを判定する計算から必ず差し引かなければなりません。

  • 精皆勤手当
  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 割増賃金(時間外手当、休日手当、深夜手当)
  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与・ボーナスなど)

ここで特に注意していただきたいのが、「精皆勤手当」「通勤手当」「家族手当」の3つはセットで除外対象だという点です。「皆勤したご褒美として払っているのだから賃金に含めてよいはず」と考えて計算に入れてしまうと、判定を誤ります。

一方で、「役職手当」「資格手当」「住宅手当」などは、最低賃金の計算に「含めて良い」手当です。除外できるのは法律で限定列挙された上記の項目だけですので、混同しないようにしましょう。とくに住宅手当は「割増賃金(残業代)の計算では除外できる場合がある」ため混乱しやすいのですが、最低賃金の判定では原則として計算に含めます。

②【給与形態別】時給換算の具体的な計算例

支払っている給与が最低賃金を上回っているかは、次の方法で計算(比較)します。

【ケースA:時給制(パート・アルバイトなど)】

「支給されている時給 ≧ 最低賃金額(時給)」であれば問題ありません。

※ただし、通勤手当などが時給に含まれている場合は、その分を引いて判定する必要があります。

【ケースB:月給制(正社員など)】

月給制の場合は、以下の数式で「1時間あたりの賃金」を算出し、最低賃金(時給)と比較します。

1時間あたりの賃金 = 月給(対象外の手当を除く)÷ 1か月平均の所定労働時間

シミレーション例
  • 勤務地:千葉県(2025年度の地域別最低賃金 1,140円)
  • 基本給:170,000円
  • 通勤手当:10,000円
  • 精皆勤手当:8,000円
  • 役職手当:20,000円
  • 年間所定労働日数:240日(月平均20日)
  • 1日の所定労働時間:8時間

※月平均の所定労働時間 = 20日 × 8時間 = 160時間

【計算手順】

  1. 対象外手当(通勤手当10,000円・精皆勤手当8,000円)を除外する。
    170,000円(基本給)+ 20,000円(役職手当)= 190,000円
  2. 1時間あたりの賃金を出す。
    190,000円 ÷ 160時間 = 1,187.5円
  3. 最低賃金と比較する。
    1,187.5円 ≧ 1,140円 となり、この場合は「適法(クリア)」となります。

一見「基本給17万円+諸手当」で余裕があるように見えても、精皆勤手当や通勤手当を除いて計算するため、思ったより時給が低く出る点に注意が必要です。仮に基本給が170,000円のみで役職手当がなければ、170,000円 ÷ 160時間 = 1,062.5円 となり、最低賃金(1,140円)を下回るため違法となってしまいます。

4. 知っておくべき「最低賃金以下」だった場合のペナルティ

万が一、自社の賃金が最低賃金を下回っていた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

差額の支払い義務(民事上の責任)

最低賃金法により、最低賃金に達していない労働契約はその部分が無効となり、自動的に「最低賃金額と同額の契約」があったものとみなされます。そのため、過去に遡って最低賃金との差額を全額支払う義務が生じます。

罰則(刑事上の責任)

地域別最低賃金を下回っていた場合、最低賃金法により「50万円以下の罰金」が科される可能性があります(特定最低賃金の場合は労働基準法が適用され、30万円以下の罰金)。

企業名の公表や社会的信用の失墜

労働基準監督署の是正勧告に従わないなど悪質なケースでは、送検されて企業名が公表されるリスクもあります。ハローワークでの求人受理がストップされるなど、採用活動にも致命的な悪影響を及ぼします。

5. 中小企業が取り組むべき「引き上げへの対策」と法改正への備え

毎年上昇する最低賃金に対して、中小企業はただ人件費の負担増を嘆くだけでなく、戦略的なアプローチを進める必要があります。

① 毎年夏〜秋の動向チェックを仕組み化する

最低賃金の改定額の目安は、例年7月下旬〜8月頃に中央最低賃金審議会から示され、各都道府県での金額は8月頃に公示、10月以降に順次発効されます。2025年度は過去最大の引き上げ幅だったこともあり、発効日が10月から翌年3月まで都道府県ごとに大きく分散する「年またぎ発効」も生じました。「10月1日に全国一斉」という従来の感覚は通用しなくなっている点に注意が必要です。夏の段階で概算を把握し、自社の所在地の発効日に間に合うよう基本給の見直しや手当の組み替えをシミュレーションするスケジュールを、年間計画に組み込みましょう。

なお、政府はかねて「全国平均1,500円」を目標に掲げてきましたが、中小企業の負担を考慮し、その達成時期を「2020年代」から「2030年代前半のできるだけ早い時期」へ見直す方向で調整が進んでいます。いずれにせよ、当面は年4〜6%前後の引き上げが続く前提で備えておくのが安全です。

②「業務改善助成金」などの政府支援を活用する

生産性を向上させ、社内の最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げた中小企業に対して、設備投資(機械の買い替え、システム導入など)の費用を国が一部補助してくれる「業務改善助成金」があります。

この制度は2026年度(令和8年度)に大きく見直されました。主なポイントは次のとおりです。

  • 賃上げコースが「50円・70円・90円」の3コースに再編(従来の30円コースは廃止)
  • 助成率の基準額が事業場内最低賃金1,000円から1,050円に引き上げ(1,050円未満は4/5、1,050円以上は3/4)
  • 募集開始は9月1日、締切は地域別最低賃金の発効日前日または11月末のいずれか早い方

特に重要なのが申請の順番です。「先に賃金を上げてから」「先に設備を発注してから」申請すると対象外になります。賃金引上げは交付申請の後、設備投資は交付決定の後に行うのが鉄則です。募集期間も短期集中になるため、早めの準備が成否を分けます。

③ 賃金原資を確保するための「価格転嫁」の交渉

人件費の上昇分を自社の努力だけで吸収するのには限界があります。取引先に対して、労務費上昇を理由とした適正な価格転嫁(販売価格の値上げ)を交渉していくことも、今の中小企業経営においては不可欠なアクションです。

6. 社労士の見解:最低賃金は「コスト」ではなく「人材投資とリスク管理」の指標

ここで、社会保険労務士としての見解をお伝えします。

多くの経営者様にとって、毎年の最低賃金引き上げは「固定費(コスト)の増加」であり、経営を圧迫する苦しい要因に見えることでしょう。そのお気持ちは痛いほどよく分かります。しかし、これからの深刻な人手不足時代において、最低賃金を巡る視点を「コストを守るための守りの労務」から「人材を確保するための攻めの労務」へとシフトしていく必要があります。

今や求職者は、スマホで簡単にエリアごとの最低賃金や他社の時給相場を比較できます。「最低賃金ギリギリで法律をクリアしている会社」と、「業務効率化を進めて最低賃金+αの原資を作り、それをしっかり還元している会社」では、応募数にも定着率にも大きな差が出ます。

また、意図せぬ「最低賃金割れ」は、退職した従業員からの未払い賃金請求や、労基署への駆け込みといった重大な経営リスクに直結します。最低賃金のクリアは、経営を守るための「最低限の防壁(リスク管理)」であり、同時に「選ばれる企業になるためのスタートライン」なのです。

給与計算の仕組みを見直し、生産性を高める工夫を凝らすことは、長期的には会社の体質を強くすることにつながります。

まとめ

最低賃金は、雇用形態に関わらずすべての労働者に適用される法的義務であり、「知らなかった」や「月給制だから」という理由は通用しません。

  • 精皆勤手当・通勤手当・家族手当・残業代・賞与などは計算から除外すること
  • 月給制の正社員も、必ず「時給換算」して最低賃金と比較すること
  • 発効日は都道府県ごとに異なり、10月一斉ではないこと
  • 違反した場合は、過去に遡った差額支給や罰金のペナルティがあること

これらをしっかりと肝に銘じ、毎年の改定前には必ず全社的な労務チェックを行いましょう。

複雑な手当の判定や、自社の給与体系が本当に法律を守れているか不安な場合、また引き上げに伴う助成金の活用を検討したい場合は、ぜひ一度、労働法の専門家である社会保険労務士(社労士)までお気軽にご相談ください。適切な労務管理で、従業員が安心して働ける強い組織を作っていきましょう。

最低賃金チェック・賃金体系の見直しは当事務所にお任せください

「うちの給与体系で本当に最低賃金をクリアできているか不安」「手当のどれを計算に含めるのか判断がつかない」「引き上げに合わせて助成金も活用したい」——。

そんな中小企業の経営者様へ。八重樫社会保険労務士事務所では、最低賃金の適合チェックから賃金・手当の設計、就業規則への反映、業務改善助成金の申請サポートまで、ワンストップで対応しています。

  • 初回相談無料/オンライン対応
  • 千葉・東京・埼玉を中心に対応
  • 給与計算・就業規則作成・助成金申請もあわせてサポート

           💡 初回無料相談・お問い合わせはこちら

               事務所の詳細はこちら
                   👇
             「八重樫社労士事務所ホームぺージ」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次