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育児休業中の社会保険料免除とは?条件と申請手続きを社労士が徹底解説【2026年最新版】

少子高齢化が進む中、育児休業(育休)を取得しやすい環境づくりは、中小企業にとっても優秀な人材の確保や定着に欠かせない重要課題となっています。

育休取得に伴う企業の負担や、従業員の収入減少をカバーするための非常に強力な制度が「育児休業中の社会保険料免除」です。

しかし、この制度は2022年10月の法改正によって免除要件が大きく見直されたうえ、2026年4月からは新たに「子ども・子育て支援金」の徴収も始まり、実務上「どの期間が免除されるのか」「賞与の場合はどうなるのか」「支援金はどう扱うのか」と頭を悩ませる担当者の方も少なくありません。

本記事では、中小企業の人事労務をサポートする社会保険労務士(社労士)が、制度の概要から具体的な免除条件、申請手続き、2026年の最新動向まで分かりやすく解説します。

目次

育児休業中の社会保険料免除制度とは?

まずは、制度の基本概要を押さえておきましょう。

制度の概要と中小企業における意義

育児休業中の社会保険料免除とは、従業員が育児・介護休業法に基づく育児休業(産後パパ育休を含む)を取得した場合、一定の条件を満たすことで、休業期間中の社会保険料の支払いが免除される制度です。

中小企業にとって「従業員が長期で休む」ことは、現場の業務回しや代替要員の確保といった大きな負担を伴います。しかし、この免除制度があることで、企業側もコストを抑えながら従業員の育休を後押しすることができます。

免除される社会保険料の種類

免除の対象となるのは、以下の社会保険料です。

  • 健康保険料(介護保険料を含む)
  • 厚生年金保険料
  • 子ども・子育て支援金(2026年4月分から徴収開始)

【2026年4月からの新制度】子ども・子育て支援金とは

2026年4月分の保険料から、少子化対策の財源として「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。2026年度の支援金率は全国一律0.23%で、健康保険料と一体的に給与・賞与から徴収されます(労使折半)。

この支援金は健康保険料の仕組みを利用して徴収されるため、育児休業や産前産後休業で社会保険料が免除されている期間は、支援金も同様に免除されます。免除の判定条件は健康保険料と同じです。給与計算ソフト上で保険料免除の設定が支援金にも連動しているか、初年度は特に確認しておきましょう。

注意: 雇用保険料や労災保険料(労働保険料)は、そもそも「実際に支払った賃金額」に対してかかります。育休中で給与がゼロの期間は自動的に発生しないため、この免除制度の手続きとは無関係です。

会社負担分・本人負担分ともに「全額免除」

最大の特徴は、「従業員本人負担分」だけでなく「会社負担分」も両方全額免除されるという点です。通常、社会保険料は労使で折半して負担していますが、その両方が免除されるため、企業にとっても直接的なコスト削減につながります。

社会保険料が免除されるための「要件・条件」

社会保険料の免除は、自動的には行われません。また、2022年10月の法改正以降、「毎月の給与」と「賞与(ボーナス)」で免除される条件が異なるため、ここが実務で最も間違いやすいポイントです。

1.【毎月の給与】免除の条件

毎月の給与にかかる社会保険料が免除されるには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。

条件A:その月の末日時点で育児休業を取得している場合

(例)10月25日~11月5日まで育休を取得。10月31日(月末)を跨いでいるため、10月分の保険料が免除。

条件B:同じ月の中で、通算して14日以上の育休を取得している場合(月末を跨がない場合)

(例)10月1日~10月15日まで育休を取得(15日間)。月末(10月31日)は働いていますが、同月内に14日以上休んでいるため、10月分の保険料が免除。

男性の「産後パパ育休(出生時育児休業)」など、数日~数週間の短期育休が増えたため、月末を跨がなくても「月内14日以上」であれば免除される仕組みになっています。

【実務の注意】 産後パパ育休の期間中に労使の合意に基づいて就業した日がある場合、その就業日は「14日以上」のカウントから除外されます。「休業日数は14日あるが、うち2日就業したため免除対象外」といったケースがあり得るため、日数計算は慎重に行ってください。

2.【賞与(ボーナス)】免除の条件

賞与にかかる社会保険料の免除条件は、毎月の給与よりも厳しく設定されています。

条件:賞与を支払った月の末日を含む、連続した「1ヶ月を超える」育児休業を取得していること

ポイントは「賞与月の末日を含む」ことと「連続1ヶ月超」の両方を満たす必要がある点です。たとえば賞与月の前半に1ヶ月超の育休を取得していても、月末時点で復職していれば免除されません。

以前は「賞与月の月末に育休を取っていれば免除」というルールだったため、12月末の数日だけ育休を取って高額な冬のボーナス保険料を免除させるケースが問題視されていました。現在はこれが対策され、月末を含む1ヶ月超の連続した取得が必須となっています。

なお、保険料が免除された賞与も「標準賞与額」としては決定・記録され、健康保険の年度累計573万円の上限計算には算入されます。賞与支払届の提出自体は必要ですので、免除だからといって届出を省略しないよう注意してください。

【会社側・従業員側】社会保険料免除のメリット

この制度を正しく活用することは、労使双方に非常に大きなメリットをもたらします。

従業員側のメリット

手取り額の維持・アップ

育休中は雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。支給率は休業開始から180日目までが休業開始時賃金の67%、181日目以降は50%です。給付金は非課税で、かつ社会保険料も免除されるため、休業前の手取りと比べて実質約8割が維持されます。

さらに2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が創設されました。原則として両親がともに14日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得した場合、最大28日間、既存の給付に13%が上乗せされて計80%相当が支給されます。社会保険料免除の効果と合わせると、この期間の手取りは実質10割相当となる設計です(配偶者が専業主婦(夫)の場合など、本人の取得のみで対象となる例外もあります)。

将来の年金額が減らない

保険料は免除されますが、免除期間中も「保険料を納付したもの」として扱われるため、将来受け取る老齢厚生年金の額が減ることはありません。

また、復職後に時短勤務などで給与(標準報酬月額)が下がった場合も、「養育期間標準報酬月額特例」の申出をすることで、3歳未満の子を養育する期間は従前の高い標準報酬月額で年金額が計算されます。免除制度とセットで押さえておきたい制度です。

会社(企業)側のメリット

法定福利費(会社負担分)の削減

従業員が休んでいる期間、会社が負担すべき社会保険料(給与のおおむね15%相当)がゼロになります。2026年4月から始まった子ども・子育て支援金の会社負担分も同様に免除されます。

企業のイメージ向上と定着率アップ

中小企業であっても「制度をフル活用して育休を応援してくれる会社」という実績を作ることで、既存社員のエンゲージメント向上や、求人採用時の強力なアピールポイントになります。

社会保険料免除の手続き・申請の流れ

手続きは、すべて会社(事業主)が日本年金機構(年金事務所)または健康保険組合に対して行います。従業員本人が直接申請することはできません。

ステップ1:従業員からの「育児休業申出書」の受領

まずは社内実務です。従業員から育休の取得希望があったら、社内の「育児休業申出書」を提出してもらいます。ここに記載された「育休開始日」と「育休終了予定日」が、申請の基準となります。

ステップ2:「育児休業等取得者申出書」の作成と提出

育休が開始されたら、速やかに「育児休業等取得者申出書」を作成し、年金事務所等へ提出します。

  • 提出時期:育児休業の期間中(取得後すみやかな提出が実務上望ましいです)
  • 提出方法:郵送、窓口持参、または電子申請(e-Govや連携ソフト)

ステップ3:免除期間の終了・変更時の手続き

当初の予定どおりに復職した場合は、自動的に免除期間が終了するため、原則として復職時の手続きは不要です。ただし、以下の場合には追加の手続きが必要です。

  • 予定より早く復職した(育休を短縮した)場合 ⇒「育児休業等取得者終了届」を提出
  • 保育園に入れない等の理由で育休を延長する場合 ⇒ 改めて延長分の「育児休業等取得者申出書」を提出

中小企業が実務で注意すべき「落とし穴」

社労士として多くの中小企業をサポートする中で、特につまずきやすいポイントを4つ挙げます。

1.「1ヶ月超」の判定は暦で計算する

賞与の免除条件である「1ヶ月超」は、「31日以上」といった日数ではなく、暦(こよみ)によって判定します。

たとえば、12月10日から育休を開始した場合、暦のうえで1ヶ月が経過するのは翌年1月9日です。そのため、1月10日以降まで育休を取得していなければ「1ヶ月超」とは認められず、12月支給の賞与保険料は免除されません。

2. 給与計算ソフトの「免除設定」タイミング

申出書を提出して年金事務所から「育児休業等取得者確認通知書」が届くまでには、少しタイムラグがあります。しかし実務上は、育休に入った対象月の給与計算から、手動またはシステム上で社会保険料の控除を「免除(0円)」に設定する必要があります。翌月になって「引きすぎてしまった」と還付処理が発生しないよう、社内での情報共有を徹底してください。

3. 子ども・子育て支援金の免除連動を確認する

2026年4月分の保険料から徴収が始まった子ども・子育て支援金は、健康保険料の免除判定に連動して免除されます。多くの給与計算システムでは既存の保険料免除設定に連動する仕様ですが、制度初年度は設定漏れや連動不良が起こりやすいため、育休取得者がいる場合は支援金分まで正しく免除(0円)になっているか、必ず確認しましょう。

4. 手続きが遅れるとどうなる?

育休期間中であれば遡って申出が可能ですが、提出が遅れると、いったん会社口座から社会保険料が引き落とされ、後から相殺・還付される形になります。会社のキャッシュフローや給与計算の修正業務に余計な手間がかかるため、育休開始後はすみやかに提出するのが鉄則です。

【社労士の見解】これからの育休対応と中小企業が取るべき戦略

ここ数年で、育児休業を巡る法制度は目まぐるしく変化しています。男性の育休取得率向上に向けた「産後パパ育休」の創設、2025年4月の出生後休業支援給付金・育児時短就業給付の創設、そして2026年4月の子ども・子育て支援金の開始と、国を挙げた「安心して休める環境づくり」が年々強化されています。

こうした変化に対し、中小企業の経営者様の中には「人手不足の自社では対応しきれない」「休まれると困る」と本音を漏らされる方も少なくありません。そのお気持ちは痛いほどよく分かります。

しかし、視点を変えれば、国がこれだけ手厚い経済支援(給付金+社会保険料の労使両面での全額免除)を用意してくれているということです。会社側が身銭を切って従業員の生活を保障する必要はありません。会社がすべきことは、**「業務の属人化を解消し、誰がいつ数週間休んでも回る体制(マルチタスク化)を作ること」**です。

育休を機に社内の業務プロセスを見直し、効率化を進めることは、結果としてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、他の社員の残業削減にもつながります。育休対応を「コストや負担」と捉えるのではなく、「組織を強くするための社内改革のチャンス」と捉えること。これこそが、これからの時代に中小企業が生き残り、優秀な人材に選ばれるための重要な戦略です。

まとめ

育児休業中の社会保険料免除は、会社・従業員の双方にとって負担を大きく軽減してくれる大変有益な制度です。

  • 給与の免除:月末時点で育休中、または同月内に通算14日以上の取得(産後パパ育休中の就業日は除いてカウント)
  • 賞与の免除:賞与支払月の末日を含む、連続1ヶ月超の取得
  • 免除の範囲:健康保険料(介護保険料含む)・厚生年金保険料に加え、2026年4月からは子ども・子育て支援金も免除対象
  • 手続き:会社が「育児休業等取得者申出書」を育休期間中にすみやかに提出

実務上のルールや期間計算で少しでも不安な点がある場合や、社内の育休規定(就業規則)の見直しを行いたい場合は、ぜひお近くの社会保険労務士(社労士)へお気軽にご相談ください。スムーズな制度運用を通じて、労使ともに安心できる職場環境を作っていきましょう。

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