フリーランス新法の施行で事業主がやるべきことは?

法律の概要

 令和6年11月1日に特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)が施行されました。

 この法律は、フリーランスと取引をする全ての事業者が守らなければならない法律で、個人と組織である発注事業者間では、個人であるフリーランスの方が取引上弱い立場になりがちのため、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために制定されたものです。

(1)フリーランスと発注業者の定義

 この法律では、フリーランスと発注業者は下記のように定義されています。
【フリーランス】
〇特定受託事業者
①個人であって、従業員を使用しないもの
②法人であって、一つの代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの
※但し、第14条では、「特定受託業務従事者」(特定受託事業者である①の個人、特定受託事業者である②の法人の代表者)と定義されています。

【発注事業者】
〇特定業務委託事業者
  フリーランスに業務委託をする事業者であって、次の①、②のいずれかに該当するもの
①個人であって、従業員を使用するもの
②法人であって、役員がいる、または従業員を使用するもの
  〇業務委託事業者
  フリーランスに業務を委託する事業者
  ※フリーランスも含まれます!

フリーランスも含まれることに注意が必要です!!

次に、フリーランスへ業務を委託した場合に課される義務と禁止行為を列挙します。

(1)取引条件の明示義務(第3条)
※口約束は認められません。

《明示すべき事項》
①業務委託事業者および特定受託事業者の名称
→発注事業者とフリーランス、それぞれの名称

②業務を委託した日
→発注事業者とフリーランスとの間で業務委託することを合意した日

③特定受託事業者の給付の内容
→いつまでに納品するか、いつ作業をするのか

④給付を受領または役務の提供を受ける期日
→どこに納品するのか、いつ作業をするのか

⑤給付を受領または役務の提供を受ける場所
→どこに納品するのか、どこで作業をするのか

⑥給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日

⑦報酬の額および支払期日
→具体的な報酬額を記載することが難しい場合は算定方法でも可能です。
 支払期日は、具体的な支払日を特定する必要があります。

⑧現金以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること

※⑥および⑧は該当する取引である場合のみ明示が必要な事項

(2)期日における報酬支払義務(第4条)


 発注事業者は、発注した給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短期間内で、支払記述を定めて、そ  の日までに報酬を支払わなければなりません。
→支払期日は、具体的な日を特定できるよう定める必要があります。
 ※「まで」「以内」という記載は、いつが支払期日なのか具体的な日を特定できないため、支払期日を定めているとは認められません。

(3)発注事業者の禁止行為(第5条)


  フリーランスに1か月以上の業務委託をしている発注事業者には、下記の7つの禁止行為が定められています。
  ※たとえ、フリーランスの了解を得たり、合意していても、また、発注業者に違法性の意識がなくても、これら    
   の行為は本法に違反することになるので十分注意が必要です。

  ①受領拒否
  →フリーランスの責任がないのに、委託した物品や情報成果物の受取を拒むことです。

  ②報酬の減額
  →フリーランスの責任がないのに、業務委託時に定めた報酬の額を、後から減らして支払うことです。

  ③返品
  →フリーランスに責任がないのに、フリーランスへ委託した物品や情報成果物を受領後に引き取らせることで 
   す。 
   
  ④買いたたき
  →フリーランスに委託する物品等に対して、通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を定めることです。

  ⑤購入・利用強制
  →フリーランスに委託した物品等の品質を維持、改善するためなどの正当な理由がないのに、発注事業者が指定 
   する物や役務を強制して購入、利用させることです。

  ⑥不当な経済上の利益の提供要請
  →発注事業者が自己のために、フリーランスに金銭、役務、その他の経済上の利益を提供させることによってフ 
   リーランスの利益を不当に害することです。

  ⑦不当な給付内容の変更・やり直し
  →フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに、フリーランスの給付の内容を変更させたり、フリーラン 
   スの給付を受領した後に給付をやり直させたりして、フリーランスの利益を不当に害することです。

 (4)募集情報の的確表示義務(第12条)


   発注事業者は、広告等によりフリーランスを募集する際は、その情報について、虚偽の表示または誤解を生じ   
   させる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
   
   ※広告等は下記のことをいいます。
    ①新聞、雑誌に掲載する広告
    ②文書の掲出、頒布
    ③書面
    ④ファックス
    ⑤電子メール、メッセージアプリ等(メッセージ機能があるSNSを含む)
    ⑥放送、有線放送等(テレビ、ラジオ、オンデマンド放送、ホームページ、クラウドソーシングサービスの 
     プラットフォーム等)

 (5)育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)


   発注事業者は、フリーランスからの申出に応じて下記の必要な配慮をしなければなりません。
  ・6ヵ月以上の期間で行う業務委託について、フリーランスが妊娠、出産、育児または介護(育児介護等)と業   
   務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。
  
  ・6ヵ月未満の期間で行う業務委託について、フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう、必要な配慮 
   をするよう努めなければなりません。

 (6)ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)


   ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要    
   な措置を講じなければなりません。また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由と 
   して不利益な取扱いをしてはなりません。

 (7)中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)


   ・発注事業者は、6ヵ月以上の期間で行う業務委託について、契約の解除または契約を更新しないとする場 
    合、例外事由に該当する場合を除いて解除日または契約満了日からから30日前までにその旨を予告しなけ 
    ればなりません。

   ・予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由を発注事業者に請求した場合、 
    発注事業者は、例外事由に該当する場合を除いて、遅滞なく開示しなければなりません。

   ※例外事由とは下記の場合となります。
    ①災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
    ②フリーランスに再委託している場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場 
     合
    ③業務委託の期間が30日以下などの短期間である場合
    ④フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合
    ⑤基本契約がある場合で、フリーランスの事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合

   《違反行為への対応》
    ・フリーランスは、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に対して、発注事業者に本法違反と思われる 
     行為があった場合には、その旨を申し出ることができます。
    ・行政機関は、その申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行い、発注事業者に対して指 
     導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わなかった場合には命令・公表をすることができます。
     命令違反には50万円以下の罰金があります。
    ・発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わ 
     ないようにするといった不利益な取扱いをしてはなりません。

     以上がフリーランス新法により、事業者が守らなければならない義務と違反した場合の対応になります。

     フリーランス新法に関連して、何かお役に立てることがございましたら、お気軽に当事務所までお問い合   
     わせください。
           
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